高い声には、「高い声の出し方」がある
特に歌の場合ですが、高い声には憧れますよね。今回はハイトーンボイスについて、書いてみます。
ハイトーンボイスの魅力 Alexandros
Alexandrosは、聞いた瞬間ハイトーンが耳に残り、「このバンド何だろう?」と追跡してしまう、そんなバンドだと思います。この曲においても、ハイトーンボイスは全開です。
なぜこんなにハイトーンにする必要があるのでしょうか?
ひとつには、曲で表現したいイメージがあるからでしょう。この曲の場合、高い空を目指して飛んでいくワタリドリのようになりたい、というメッセージを伝えるために、突き抜けるようなハイトーンボイスを用いているのでしょう。
あとは、ハイトーンボイスの方が、ギターやドラムなどの楽器隊が出す音とぶつからず、歌を前面に出すことが出来るからだと思います。ヘビーメタルなんかでも、楽器隊は重低音の方を目刺し、ボーカルは逆に高音を目指すという図式があります。低音が魅力の歌手の場合は、バックの演奏はわりと控え目になっていると思います。
こんな高い声は、絶対に出ないだろう、と思ってしまいます。
高い声には、「高い声の出し方」がある
一般的な理解では、高い声は生まれつきものです。そして、普通の声(地声)を階段的に上げていくことで高い声を出そうとします。でも段々きつくなり、ある時点でひっくり返る(裏声になる)。これが通常のパターンです。その裏声は、歌手が出すハイトーンボイスとは似ても似つかない、弱々しいものでガッカリします。
私も40年間生きてきて、ずっとそうでした。声が小さく、高い声も出ない人生を、40年送ってきたのです。しかし、ボイストレーニングを学び、最近改めて実感したパラダイムシフトが、タイトルにも書いた次のことです。
高い声には、「高い声の出し方」ある
高い声には、高い声専用の発声法がある。地声による普段の発声とは、質的に異なる発声法。これを知らないと、いくら地声を高くしようとがんばって練習しても、高い声は出ないのです。
しかし、声とは不思議なもので、もともと高い声が出る人、自然に出るようになる人はいます。ただしこれはレアケースです。皆さんの周りにも、ちょっと歌がうまい人は何人もいると思います、でも普通の人はその百倍くらいたくさんいます。
さて、その構造を説明したいと思います。
キーワードは、やはり「声門閉鎖」
声区としては、裏声を用います。これも一般的な感覚からは意外な感じがすると思います。ハイトーンボイスは、すべて裏声です。
声帯に関しては、内筋の働きで閉じますが、それ以外の部分(仮声帯など)も若干閉じると思います。そのため全体としては声門閉鎖、になるわけです。たとえ裏声であっても、張りのある声になります。これは、自然に高い声を出せるようになった人も、実感できる点だと思います。「あ、少し喉の奥の方を閉めているな」と。
そして共鳴のテクニックを用い、響きを加えます。土台としてはお腹を外側に張り出すことで喉を下げ、意識としては舌根をやや下げます。これをしないと、苦しそうな声になってしまうのです。声門閉鎖だけでは、文字通り閉じた声になってしまうので、共鳴によって広がりを持たせる必要があるのです。
さらに、呼吸の力により音量を上げます。腹式呼吸により呼吸量を増やし、強めの息を断続的に声帯に当てるのです。この辺りの説明は、こちらで詳しくしています。「呼吸」による後押しで、さらに声をパワーアップ!
裏声を、発声の3要素をフルに活用し、ハイトーンボイスに変えていくのです。これが高い声の出し方になります。
方法としては以上ですが、これをマスターするには、やはり時間がかかります。歌唱の場合は、地声とハイトーンボイスの切り替えが自然に出来るようになる必要があります。いわゆる、声をつなげる、というやつです。
構造を理解して練習するのと、そうでなく形だけ練習するのでは、効率がだいぶ変わります。声門閉鎖の練習については、今後書いていきます。とりあえず、高い声は地声の延長では出せないこと、専用の出し方があることを覚えておいて下さい。