太い声を出すには・・・?~声帯の形を変えてみよう!

太い声を出すには・・・?~声帯の形を変えてみよう!





今回も太い声の出し方について考えてみたいと思います。
前回は、共鳴というテクニックを使った太い声の出し方でした。

 

発声の3要素は①共鳴②声帯③呼吸、でした。ということは、そうです。②の声帯を使ったやり方を説明したいと思います。最初に断っておきますが、こちらの方が難しいし、習得に時間がかかります。しかし、その効果は歴然です。素人と歌手の声で、もっとも違うのはこの部分の働きだと思います。

 

まず、声帯というものがどういう形をしているか、見てみましょう。

A.シェフラー S.シュミット著 「からだの構造と機能」より

何となく見たことあるでしょうか。写真で見るとかなり生々しいので、昔習った解剖学の教科書を引っ張り出してきて、シンプルなイラストを探しました。白くなっている、1対のヒダが、声帯です。

閉じたり開いたりします。呼吸時は開き、発声時は閉じています。
声を出す時、閉じてはいるけど、完全に密閉しているわけではありません。閉じている声帯の間を、息が出ていくことで声帯がブルブルと震えて、それが声になるわけです。

 

さて、この声帯がどういう状態の時に、太い声が出るのでしょうか。
よくされる説明ですが、ギターとベースの弦を思い出して下さい。ギターとベースの弦の違いは、太さにあります。

低くて分厚い音がするのは、間違いなくベースの方ですよね。
まず第1ポイント、声帯は太い(厚い)方が、文字通り太い声が出るのです。
声帯が厚くなるのは、低い声の時です。

 

次に長さと、圧着度の関係です。
声帯が引っ張られて長くなると、薄くなると同時に張りが出ます。すると、音としては高い音が出ます。

裏声というのは、高い声を出そうとすると自然とそうなりますが、これは声帯が長く薄くなって張りが出ている状態です。今度は輪ゴムを思い出して下さい。両脇を持って引っ張った状態で弾くと、最初より高い音が出るはずです。

長く薄くなっている時、声帯の閉じ具合はどうなっているでしょうか。
当然、長くなった分、真ん中あたりは開きやすくなっていると思います。
裏声というのは、地声に比べて弱々しく、息をたくさん使います(=息もれが多い)。

 

太い声を出すには、この逆の状態を目指せばいいのです。
つまり、声帯はある程度短くして、圧着させるのです。声帯同士の接触面が多い方が、ブルブルと震えて分厚い音が出るのは、想像に難くないですね。これが第2ポイントです。

斉田先生の本も引用します。

同じ声帯振動パターンの地声であっても、力強い声では披裂軟骨が強く内転し声門後部の左右の披裂軟骨間が狭くなり、後部声門も閉じる傾向にある。そのため左右の声帯が強く接触し、声門が閉じている時間が長くなるのが観察される。逆に弱い声、優しい声と感じる声では、左右の仮声帯間は広くなり声帯の接触の仕方は弱くなって声門があいている時間が長くなる。

 

まとめると、太い声というのは、
①声帯が太い
②声帯が圧着している
これらの条件下で出ると言えます。

 

仕組みを極めてシンプルに描いてみました。次に、これを実現させる方法論です。
まず声の高低ですが、ある程度低い声を出しましょう。生まれつきの声帯の太さの影響もありますので、ある程度、でいいと思います。大事なのは②の方です。

 

②声帯を圧着させる。理想的には声帯周辺の筋肉のみを使って行うことです。ところが、これが非常に分かりにくいのです。多くの人は、こんなことを意識したことがありません。もともと声が太い人は、無意識のうちに習得してしまっていることが多いので、このような動きを内省することは出来ません。声帯に感覚がないことも影響しています。

 

それでも私たちは日常必要時には、がなり声、どなり声、叫び声などの太い声を出しています。どのようにやっているのでしょうか。
これは、随意筋の働きなので、想像することが出来ます。

舌や喉や首全体を筋力で閉めることで、外側からの圧力で声帯を圧着させているのです。
このやり方も、たまにであればいいのですが、常にやっていると、喉の粘膜などを痛めます。繰り返しますが、理想的なのは声帯周辺の筋肉のみを使うことなのです。

 

この感覚をつかむにはとても時間がかかります。前述した声帯の状態を理解して、声帯を圧着させるように声を出してみてください。声の質の変化、息の出方でモニターすることが出来ます。圧着している方が、息の出方はセーブされているはずです。喉仏あたりに手を置いて、首の筋肉で締め付けている感じがないように、力が抜けている状態を保ちながら声帯のみを圧着させてみて下さい。低い声の方が、圧着感は得られやすいです。
これまでにも何回か述べた、「声門閉鎖を加えた声」が、ここから始まるのです。

 

すぐに結果が出やすいのは、前回話した「共鳴」を使うやり方です。同時平行で声門閉鎖の練習を重ねてみて下さい。両方出来た時、あなたの声は最強に太くなっているはずです。