「声張って!」人前で挨拶したりスピーチしたりする時
「もっと声張って!」と言われてしまう時
年度末~年度始めのこの時期、歓送迎会がたくさんあります。
そして宴もたけなわな頃にやってくるのが、「一言お願いします」コーナー。
送別される人、歓迎される人、どちらも何か話す機会が設けられます。
そこで、普段と同じような話し方をしたり、声が小さかったりすると、
「もっと声張って!」と言われてしまいます。
実際、騒がしい飲み会の場では、普段と同じ話し方では聞こえないのです。
マイクがあればまだいいのですが、ないことも多いです。
この「声を張る」ということが、どういうことか分からない人もいます。
今回は、そのメカニズムを紐解いていきます。
「声を張る」ってどういうこと?
まず、「声を張る」とは、感覚的な表現です。
「お腹から声を出す」「頭のてっぺんから声を出す」並みに、感覚的な表現です。
でも言わんとすることは分かります。
「張りのある声」を出す、と言葉の順番を入れ換えればこうなります。
「声帯を張る」とも翻訳できそうです。
声を張った発声の時、喉の奥の方に力みを感じることが出来ます。
この時、声帯はどのような状態になっているのでしょうか。
声帯は、骨と骨の間に張られた1対の靭帯で出来ているとイメージしてみてください。
(実際はもう少し複雑で、筋肉も並走しており、表面は粘膜で覆われています)
その間を空気が通ることで、振動して音が鳴ります。
これに張りを持たせた方が、張りのある声が出るのでしょうか?
答えはイエスです。
張りを持たせるには、第一感としては引っ張ることが考えられます。
声帯が引っ張られ長くなると、音程としては高くなります。そして声帯は薄くなり、その間は開きやすくなってしまいます。
これでは、張りのある太い声にはならないのです。
このあたりの事情は、こちらの記事を参照ください。
つまりここでも、声帯は圧着させ、筋肉(内筋)により厚くする必要があるのです。
第一感で挙がった、声帯を引っ張ることとは逆の動きです。
発声の勉強をしていない一般の人には、声帯を引っ張ることと圧着させること、その違いを区別することはほぼ出来ません。
いずれも、喉の奥の方に力が入っている、という感覚で処理されるのです。
声を張ろうとして、高い声になっている人はよく見かけます。
自然な感覚では、声を張る、とは声を高くする(声帯を引っ張る)ことだからです。
ざわざわした音の周波数より高い声を出せれば、多少通るようになるとは思いますが、上ずり感は否めません。
声を張ることを、共鳴の技術でまかなっている人もいます。
それでも声としては大きくなり、遠くまで響くようになるので、正解です。
ただし、どうしてもオペラ調になってしまい大袈裟な印象を与えかねないので、声帯の調節で声を張れた方がいいと思います。
まとめますが、「声を張る」とは、声帯を筋肉により太くし、声帯同士を圧着させることなのです。
そこに多少強めの呼気を当て、共鳴のエッセンスをブレンドすればなおベターです。
「張った声」が与える印象
声が与える印象は、一つのボディランゲージです。
話の内容が今一つでも、声が堂々として聞き取りやすければ、与える印象はよくなります。
「声を張る」こと、その構造と原理をよく理解し、あなたの一言が拍手喝采に包まれて終わるよう、日々練習していきましょう。