無駄なく、偏りなく。発声の3要素とは?
発声は、3つの要素から成り立っている、ということが医学的には言えるようです。
一言で発声と言っても、その構造は複雑で、どこから手をつけたらいいか分からなくなってしまいます。そんな時、この分類はとても役に立ちます。
斉田先生は、著書「声の科学」で、このように述べています。
声はどのように作られるのか?
声を出すとき、どのようにするか試してみよう。まず息を吸って息をはくとき、のどの声帯という筋肉のヒダを閉じる。吸い込んだ空気を出すときに、声帯を振るわせて音が出る。そして口を開けたり、下を動かしたりして、空気の通り道の形を変えいろいろな音色の音を作る。声が作られるのは、このように息を吸って出す呼吸、その息を音に変える声帯振動、口の中の形を変え音色を変え響きをつける共鳴と構音の3つの過程を経て行われる。これが、発声と発語のメカニズムである。これらの3つの過程をそれぞれ無意識に、または意図的に行い、話したり歌ったりする。
また、駒澤先生は、HPにこのようにまとめています。
声の調節は、呼吸・声帯・共鳴腔の3要素に分けて考えると理解しやすく、まず自分の声の問題点がどこにあるのかを把握することが何よりも大切です。呼吸は声のエネルギー源、声帯は音のもと(原音)を作る部分、共鳴腔は「ことば」と「響き」を加える部分です。このうち医療の対象になるのは圧倒的に声帯であることが多いのですが、声帯には感覚が乏しいため、これを直接コントロールするのは極めて難しい作業です。そこで、呼吸と共鳴腔の助けを借りて、声帯を調節することが必要になってきます。
この理論に則り、発声の3要素として
①共鳴 ②声帯 ③呼吸
を挙げたいと思います。
発声における問題点を考えたり、トレーニングを行う時は、この3点に分けて考えていくといいのです。
逆に言うと、この3点のどれかが欠けていたら、偏りがあるということになります。
ボイストレーニング=呼吸(腹式呼吸)という図式で、腹筋と腹式呼吸の練習ばかりやっていても、歌は上達しません。もし腹筋が発声の本筋だとしたら、スポーツ選手はみんな歌がうまいことになってしまいます。
私の経験上、比較的すぐに効果が出るのが①共鳴です。トレーニングに時間がかかりますが、もっとも大切なのは②声帯だと考えます。③呼吸は、応用的な技術になると思います。ですので、並び順は①共鳴②声帯③呼吸としています。