太い声を出すには・・・?腹式呼吸と発声のカラクリを斬る!
「太い声」を出すにはどうしたらいいのでしょうか?
まずはこの疑問に隠された悩みを考えてみます。
・話し声が高いと言われることが多く、人に何か説明する時、軽い印象を持たれてしまい、説得力に欠ける気がする。
声の高い低いは、生まれつきの声帯の長さによります。長い人は低く、短い人は高い声になります。体の大きい人の方が、生物学的に声帯も長くなっています。しかし、話し方の癖で、裏声に近いところで話す人もいます。人前で話したり、人を説得したりする時、低い声の方が、もっともらしく自信があるように聞こえる事はよくあります。
・そもそも声が小さく、コミュニケーションに支障が生じる。
昔の私もそうでした。単純に、大きくて太くて通る声を出したい、という悩みかもしれません。私の文脈では、「響きのある声」と「太い声」は若干違うのですが、ここでは同じような意味として使っていきます。
・好きな俳優が、太くて魅力のある声をしていて、自分もそんな声が出せるようになりたい。
TVを見ていると、「この人の声は魅力的だ」と感心することがあります。私が声で好きなのは、谷原章介さんです。
「低音の魅力」という言葉があるように、低くて太い声には、人を惹きつける要素があるようです。
パワーボイスセミナー
太い声を出したいことの目的が整理された所で、この動画を見てみてください。
耳鼻咽喉科医の、松永敦先生による解説です。松永先生は、大阪で「パワーボイスセミナー」という講習会を定期的に開催されていて、その内容はyoutubeで見る事が出来ます。
松永先生が説明しながら実演している、お腹を外側に張り出した時の声、これが「太い声」と言えると思います。この動画の説明で言い尽くされていると思いますが、解説を加えていきます。
まず、太い声を出すにはに腹式呼吸が大切、という通説があります。松永先生のパワーボイスセミナーも、この回のテーマは「腹式呼吸」です。No.5の、この動画だけ見るとより分かり易いのですが、必要なのは腹式呼吸そのものではなく、お腹を外側に張りだすこと、だけです。
お腹を外側に張り出す
→横隔膜、肺、気管、咽頭が連動して下がる
→咽頭腔に共鳴腔ができ、響きのある太い声が出る
というメカニズムです。お腹を外側に張った状態を保ったまま発声することが要点なので、実は呼吸は関係ありません。そして太い声を生み出しているのは、呼吸ではなく共鳴だ、ということになります。
腹式呼吸の意味
では、なぜ腹式呼吸が大切と言われるのか。多くの人がそう説明している事には、ちゃんと理由があります。
それは、この「お腹を外側に張り出す」という動きが、腹式呼吸に含まれているからです。腹式呼吸で息を吸う時がそれです。異なるのは次です。声が出るのは、息を吐く時ですが、お腹をへこませながら息を吐くと、通常の腹式呼吸になってしまいます。声も、最初は一瞬太くなりますが、持続は難しいです。響きを持たせるためには、お腹は外側に張り出させたまま息を吐いて発声、なのです。
腹式呼吸には、発声における利点が多くあります。しかし、太い声の一要因が「共鳴」にあり、腹式呼吸が「呼吸」に加えて「共鳴」に大きな影響を与えているという理解がされていないことが、混乱を招いている原因です。そのため、腹式呼吸の練習を一生懸命しても、声に影響がないという不全感が残ってしまうのです。
このことは一つの知識であり、理解することで比較的すぐに効果が出る種のものです。練習としては、松永先生も解説しているように、お腹に手を当ててふくらみを確認しながら声を出してみて下さい。喉の奥の方が、下方に拡がっている、という構造を意識してみて下さい。無意識に出来るようにならなくても、太い声を出す必要がある時に、この知識を思い出して実践できれば、まずは目標達成だと思います。ぜひやってみてください!