ミックスボイス 混ぜるな危険!

ミックスボイス 混ぜるな危険!

ミックスボイスが出るとはどういうことか

昔の私は、歌に関しては素人同然、いや、ただの素人でした。
楽器は多少出来ましたが、歌に関しては、音域も狭く声質も悪かったと、自信を持って言えます。

ボイストレーニングをするようになって、現在は音域は伸び、声がいいと言われることが多くなりました。

何より、いわゆるミックスボイスが出るようになったことが大きいです。

でも、何を証拠にミックスボイスが出る、と言えるのでしょうか。

今回は、その実証について話していきたいと思います。

ミックスボイスにおける声帯の変化

では、いったい何がどう変わったのでしょうか。

まずは、よく言われることですが、地声から裏声までを、連続した一本の声として発声出来ることです。
地声から一音ずつ上がっていってもいいのですが、途中で明らかに裏声に変ってしまったり、声がひっくり返ってしまったりしないで上がっていけるか、というところがポイントです。
換声点を、目立たないようにクリアする技術、と言うことも出来ます。

そして第二に、こちらの方がより明確な証拠なのですが、一度ミックスボイスを習得してしまうと、以前の歌い方にはもう戻れない、という現象があるのです。

以前だったら出していて苦しかった高音を、同じように苦しく歌ことは出来ません。
地声の限界までは地声で歌い、その次の音から裏声に切り替えて歌うという、一般の人が行っている切り替え式の歌唱は、もう出来ません。

ミックスボイス、とはよく言ったもので、一度ミックスしてしまった発声は、もう元には戻せない。

これが動かしがたい証拠となります。

あえてミックスボイスじゃない高音で歌おうとしても、どうしても出来ないのです。

私の定義では、いわゆるミックスボイス=声門閉鎖を加えた声です。
声帯の筋肉の働きが、変わってしまった、ということです。
声帯の筋肉は、癖がつきやすいと言われています。
数年間歌を封印したら、もとの歌い方に戻れるかもしれませんが、今のところあえてそうするつもりもありません。

もう戻れないという意味では、“混ぜるな危険”です。
高い声を出したい人にとっては、嬉しい変化であるとも言えます。

先天的なミックスボイス

世の中には特に意識せず自然にミックスボイスを出せるようになる人がいます。
発声法というものは、長い時間をかけて、その人独自の変化をたどるものです。
小学生くらいの時に、何かのきっかけで普通の歌い方とは違うやりかたを試してみて、
その積み重ねによりミックスボイスにたどり着いた場合など…。

いわゆる先天的なミックスボイスの持ち主は、
自分の声がミックスボイスであることを、振り返ることも実感することも出来ません。

先ほど説明したように、ミックスボイスから通常の歌い方に戻ることが出来ないため、両者の比較は困難なのです。

自分の歌い方を、内省して説明することは出来ます。
しかしそれは感覚的な説明になってしまい、通じる人には通じるけど、万人に理解出来るものではありません。
頭のてっぺんから声を出す、鼻に響かせて歌う、などの表現がこれにあたると思います。

後天的にミックスボイスをマスターした人は、この違いが分かります。
ミックスボイスを習得しようとしている人の、声の悩みや躓きが分かるのです。
後天的にマスターした人の間では、共通了解可能なメソッドが成立すると思います。

私におけるその過程も、忘れないうちに体系化しなければ、と思っているのですが、
今回はいわゆるミックスボイスの、不思議な現象の話でした。